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- 2025.06.01
- ブログ
ASDの人が見ている世界とは?「ちょっと違う」の理由を脳と感覚からひもとく |松山市の心療内科・古町メンタルクリニックより
「どうして、そんなに気にするの?」
「こだわりすぎじゃない?」
「何を考えてるのかわからない…」
でも、ASD(自閉スペクトラム症)の方にとっては、これらは日常で繰り返される体験かもしれません。
それは性格や努力ではなく、脳の感じ方や情報処理の仕方が「少し違う」から。
今回は、ASDの人が見ている世界を、感覚・認知・コミュニケーションの観点から詳しくひもといていきます。
■ 感覚が鋭すぎる:「普通」がつらく感じる理由
服のタグが痛くて集中できない
人混みで音やにおいが強く感じられてパニックになる
騒音・まぶしい光で頭が疲れてしまう
ASDの方は、感覚のフィルターが薄いと言われており、外からの刺激がそのまま脳に届いてしまいます。
五感の過敏さや鈍さは、日常生活を大きく左右し、他の人には伝わりにくい「見えないしんどさ」を生み出します。
■ コミュニケーションが苦手:「どう話せばいいのかわからない」
ASDの人が見ている会話の世界は、とても複雑で高度なものです。
「ただ話せばいい」と言われても、その“ただ”がとても難しいのです。
話の途中で何を言えばいいかわからず、沈黙してしまう
相手の感情や意図が読み取れず、「失礼だったかも」と後で悩む
ジョークやたとえ話の意味が分からず、場の流れに取り残された気分になる
ASDの方は、「空気を読む」ことや「言葉の裏を読む」ことが苦手です。
それは人を思いやれないのではなく、感情や意図を読み解く脳の回路の働き方が異なるからです。
■ 話題が浮かばない・雑談ができないのもASDの特性
「何を話したらいいのか」がわからない
話題を選ぶのに頭の中で時間がかかり、沈黙してしまう
自分が得意な話題以外は浮かばず、無理に話そうとして疲れてしまう
ASDの方は、
相手の関心を予測したり、
その場の雰囲気から自然に話題を選ぶことが苦手です。
そのため雑談は、脳の中で常に“正解探し”をしながら行う作業になり、大きなエネルギーを消耗します。
■ 予定の変化に弱い:「突然」がこわい
いつもと違う手順や予定に強くストレスを感じる
急な変更でパニックになってしまう
同じ道順、同じ順番にこだわる
ASDの人にとって、「予測できること」=安心の土台です。
そのため、急な予定変更や突発的なトラブルに対応するのが非常に苦手で、「柔軟に動く」ことが難しいと感じることも多いのです。
■ 興味の偏りと没頭:「好き」に深くハマる
特定の話題に強いこだわりがある
自分の得意分野に長時間没頭する
好きなことは人並み以上に詳しい
ASDの人は、特定の物事に強く興味を持ち、それを深く追求する傾向があります。
これは「こだわりすぎ」と見られることもありますが、裏を返せば専門性や集中力の強みでもあります。
■ 感情の調整が難しい:「感じすぎる」か「感じられない」
ちょっとしたことで涙が止まらない
感情がうまく表現できず、誤解される
無表情・無反応に見えるが、心の中では大きく動揺している
ASDの方は、感情のブレーキやアクセルが極端になりやすく、
感情を出しすぎてしまうことも、うまく表現できないこともあります。
それは「冷たい」「わがまま」ではなく、感じ方や表現の仕方が違うだけです。
■ 情報の処理に時間がかかる:「一度にたくさん」が苦手
複数の指示を同時に受けると混乱する
会話や作業の途中で処理が追いつかなくなる
「考える→話す→行動する」に時間差がある
ASDの方は、処理速度やワーキングメモリが限られていることがあり、
情報が多すぎると頭の中で「フリーズ」してしまうことがあります。
■ がんばりすぎて、疲れてしまう──二次障害のリスクも
周囲に合わせようと無理をしてしまう
「ふつう」を装って、家でぐったりする
うつや不安、パニックなどが重なって現れることもある
ASDの人は、人知れずがんばっていることが多く、自分に厳しすぎる傾向があります。
「もっとちゃんとしなきゃ」と無理を続けた結果、心や体の不調につながることもあります。
■ 「わたしって、へん?」と感じたときこそ
ASDの特性は、性格や育てられ方の問題ではなく、脳の働き方の違いによるものです。
だからこそ、「できないこと」があるのは当たり前。
まずは、
“それは自分のせいじゃない”と知ること。
そして、自分に合ったやり方を少しずつ見つけていくことが大切です。
■ ASDかもしれないと思ったら──心療内科でできること
古町メンタルクリニックでは、
大人・子どものASDの診断・評価
日常生活での困りごとへのアドバイス
ご家族や職場との関係性のご相談
なども承っています。
「これって自分にも当てはまるかも」
「家族がそうかもしれない」
と思ったら、まずは一度ご相談ください。