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- 2026.02.08
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発達障害・不安神経症から考える先延ばし癖― それは怠けではなく心のサイン ┃松山市の心療内科・古町メンタルクリニックより
「やらなきゃいけないのに動けない」
「締め切り直前まで手がつかない」
「いつもギリギリになってしまう」
こんな“先延ばし”で悩んでいませんか?
先延ばしをしてしまうと、つい
「自分はだめだ」
「どうしてこんなこともできないんだろう」
と、心がしんどくなってしまいますよね。
でも、まずお伝えしたいのは――
先延ばしは、あなたの怠けや甘えではないということです。
特に、
- 発達障害の特性がある方
- 不安が強い方
- 完璧主義の傾向がある方
にとって、先延ばしはとても身近でつらい問題になりやすいのです。
今日はこの先延ばしを、
発達障害や不安神経症という視点から、やさしくひも解いてみたいと思います。
先延ばしは「怠け」ではない
先延ばしを繰り返すと、多くの人はこう考えます。
- 自分はだらしない
- 意志が弱い
- やる気がない人間だ
でも実は、先延ばしの背景にはさまざまな心の要因があります。
決して「根性の問題」ではありません。
むしろ臨床で出会うのは、
- まじめで
- 責任感が強く
- 人に迷惑をかけたくない人
ほど先延ばしに苦しんでいる、という現実です。
「ちゃんとしたい」という気持ちが強い人ほど、
うまくいかない自分を責めてしまい、その苦しさがさらに先延ばしを強めてしまうこともあります。
発達障害と先延ばしの関係
先延ばしは、発達障害の特性ととても深く結びついています。
ここで大切なのは、先延ばしが“性格”ではなく、脳の得意・不得意と関係していることがあるという点です。
■ ASD(自閉スペクトラム症)と先延ばし
ASD傾向のある方では、次のような理由で先延ばしが起きやすくなります。
- 見通しを立てるのが苦手
- 優先順位をつけにくい
- 手順がはっきりしないと動けない
- 「どこから始めればいいか」わからない
- 完璧にやろうとして固まってしまう
ASDの方は、「大まかに始めて途中で調整する」という進め方が苦手なことがあります。
そのため、見通しがはっきりしない状態では、
- 何をどこまでやればいいのか
- どの順番が正しいのか
が頭の中で渋滞してしまい、結果として動けなくなってしまうのです。
やる気がないのではなく、
「頭の中で整理する作業そのものが、とても大変」
なのです。
■ ADHD(注意欠如・多動症)と先延ばし
ADHDの特性がある方では、
- 注意が散りやすい
- 集中が続きにくい
- 興味のない作業に取りかかれない
- 締め切り直前でないとスイッチが入らない
といった理由で先延ばしが起こりやすくなります。
これは性格ではなく、
脳の「注意と実行機能」の特性によるものです。
頭では「やった方がいい」と分かっていても、
脳が“今すぐの危機”を感じないとスイッチが入りにくく、
- 刺激の弱い作業は後回し
- 期限が近づいて初めて動ける
ということが起こりやすくなります。
不安神経症と先延ばし
発達特性がなくても、不安が強いと先延ばしはとても起こりやすくなります。
■ 不安が生む“回避としての先延ばし”
不安神経症のある方では、
- 失敗するのが怖い
- ミスをしたらどうしよう
- 人からどう思われるか心配
といった気持ちが強くなり、
「やるべきこと」よりも
「それに向き合う不安」のほうが大きくなります。
その結果、自然と
不安から逃げるための先延ばし
が起きてしまうのです。
完璧主義が先延ばしを強める
発達障害や不安と並んで、先延ばしをとても強くするのが「完璧主義」です。
しっかりやらなきゃ
完璧に仕上げなきゃ
中途半端にはできない
でも今は完璧にできる気がしない
だったら、もう少し後で…
“きちんとしよう”と思うほど苦しくなり、
その苦しさを避けるために先延ばししてしまう。
これは、とても自然な心の反応です。
どのタイプでも共通していること
先延ばしはほとんどの場合、
「怠けている」のではなく
「心の負担が大きすぎる」
状態で起きています。
先延ばし = 心が発している“しんどいよ”というサイン
とも言えるのです。
やさしい対処のヒント
― CBT(認知行動療法)的な考え方
先延ばしへの対処で大切なのは、
「もっとがんばる」ことではなく、考え方と行動をやさしく整えることです。
■ まずは考え方のくせに気づく
- 「完璧にやらなきゃ」
- 「失敗したら終わりだ」
- 「今はまだ無理」
こうした自分を追い込む考えがないか、まずは“観察する”ことから始めます。
■ 考えをやさしく言いかえる
「完璧にやらなきゃ」
→「まずは60点で大丈夫」
「全部やらないと意味がない」
→「今日は最初の一歩だけでいい」
こうした言いかえが、心をぐっと軽くしてくれます。
■ 行動を小さく分ける
「レポートを書く」ではなく
- パソコンを開く
- ファイルを作る
- 最初の1行を書く
ここまで細かく分けてみましょう。
“今できる一歩だけやる”ことが大切です。
■ 5分ルール
「とりあえず5分だけ」
と決めると、意外と動き出せます。
動き始めると気持ちも少しずつついてきます。
■ 不安と一緒に動く練習
「不安がなくなったらやる」ではなく、
不安があっても、できる範囲で動く
という練習を少しずつ重ねていきます。
■ 手順の見える化
特にASD傾向のある方には、
- やることを書き出す
- 順番を決める
- チェックをつける
といった工夫がとても有効です。
ひとりで抱えなくていい
先延ばしが強く、
- 仕事に支障が出ている
- 学校生活がうまくいかない
- 自己嫌悪がつらい
というときは、発達特性や不安障害が関係していることが少なくありません。
それは“あなたの努力不足”ではなく、
心と脳のしくみの問題かもしれません。
さいごに
先延ばしをしてしまうあなたは、
弱い人でも
怠け者でも
だめな人でもありません。
発達障害や不安神経症の特性の中で、
精一杯がんばっている人です。
まずは、
“うまくいかないのは自分のせいじゃない”
と知ることから始めてみてください。
当院では、
- 発達障害による先延ばし
- 不安からくる先延ばし
- 完璧主義による行きづまり
について、お一人おひとりに合わせたサポートを行っています。
つらいときは、どうぞお気軽にご相談ください。


