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- 2025.06.01
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片付けられないのは、心や脳のせいかもしれません──発達障害の特性と“片付けのしんどさ”をやさしく見つめて |松山市の心療内科・古町メンタルクリニックより
「どうして私は、ちゃんと片付けられないんだろう……」
「他の人はできているのに、自分だけダメな気がする……」
そんなふうに、自分を責めてしまう方がたくさんいらっしゃいます。
でも実は、「片付けられない」のは性格や努力不足のせいではなく、
脳の働き方や感覚の特性が影響していることがあるのです。
■ 片付けは、じつはとてもむずかしい
片付けという行動には、実はたくさんのステップが必要です。
何を片付けるか決める(判断)
物を分ける(分類)
どこに置くか決める(計画)
手を動かして実行する(行動)
気をそらさずやりきる(集中)
物の価値を判断して手放す(決断)
発達障害(ADHD・ASDなど)のある方は、こうした一つひとつのステップに困難を感じやすく、
「頭ではわかっているのに、うまくできない」という状態になりやすいのです。
■ 発達障害と「片付けが苦手な理由」
◉ ADHD(注意欠如・多動症)の場合
気が散りやすい:別のことが気になって中断してしまう
やる気のスイッチが入らない:始めたいのに体が動かない
注意のスポットが片付けに向かない:散らかっていても気にならず後回しになりやすい
優先順位がつけにくい:「今何から手をつけるか」が判断しづらい
手順が整理できない:「どこからどうやればいいか」がわからず混乱する
時間の感覚がずれている:「あとでやろう」が続いて、気づいたら1日が終わってしまう
◉ ASD(自閉スペクトラム症)の場合
片付けの“正解”がわからない:「どう整えればいいか」が決められない
こだわりが強い:モノの配置を変えたくない、やり方を変えられない
価値判断がむずかしい:捨てる・残すの線引きができず迷ってしまう
感覚が過敏でしんどい:ホコリのにおいや掃除の音などが不快で避けてしまう
これらは「甘え」ではなく、その人らしい感じ方・考え方の表れです。
■ 自分を責める前に、「やりやすいやり方」を見つけよう
片付けを苦手に感じる人にとって大切なのは、“完璧”を目指さないこと。
少しでもやりやすくするためのヒントを、ここにまとめました。
■ 少しだけラクになる片付けの工夫
✅ 一か所だけやる
「今日は机の上だけ」「玄関だけ」など、エリアを小さく区切る。
✅ タイマーで“10分だけ”やる
「ずっと」はしんどい。10分で終わっていいと決めておくと始めやすい。
✅ 見える収納を使う
引き出しよりも、透明ケースやオープン棚で「見える収納」にするとラク。
✅ できたことを記録する
「今日はこれだけやった」と紙やアプリに記録して、自信につなげる。
✅ 写真で“ビフォー・アフター”を残す
変化を目で見て実感できると、モチベーションになりやすい。
✅ 片付けを予定に入れる
「いつかやる」ではなく、「〇日の〇時に15分だけ」とカレンダーに入れる。
✅ 作業を3ステップに分ける
「いらない物を取る → 必要な物をまとめる → 戻す場所に置く」とシンプルに。
✅ モノに“住所”をつける
「ハサミはこの引き出し」と決めておくと、戻しやすくなる。
✅ 一緒にやってくれる人を見つける
信頼できる人にそばにいてもらうだけで、行動に移しやすくなる。
✅ お気に入りの音楽をかける
気分が少し楽になり、行動のきっかけになることも。
✅ “完璧じゃなくていい”と自分に言う
全部終わらなくても、「ここまでやった自分」にOKを出してあげる。
✅ “安心スペース”を1か所作る
全体が散らかっていても、「ここだけは片付いている」場所があると、心が落ち着く。
■ 「あなたに合ったやり方」を、一緒に探していきましょう
片付けの困りごとは、人によって背景も感じ方もさまざまです。
だからこそ、「普通はこうする」を基準にするのではなく、“あなたにとってやりやすい方法”を一緒に探していくことが大切です。
■ 最後に
片付けができないとき、「自分はだらしない」「人としておかしい」と思ってしまうかもしれません。
でも、それは脳や感覚の特性による“困りごと”であって、あなたの価値とは関係ありません。
少しずつでかまいません。
「片付けられない」ことに悩むあなたに、そっと寄り添える場所でありたい。
私たち古町メンタルクリニックは、そう願っています。