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「執着をとる」「ぐるぐる思考をとる」ということ― 発達特性・不安障害との関連と、心を軽くする具体的な対処法     ┃松山市の心療内科・古町メンタルクリニックより

当院には、

  • 仕事のことで同じ不安が頭から離れない
  • 人間関係の出来事を何度も思い返してしまう
  • 過去の失敗にずっととらわれている

といった“執着”や“とらわれ”でつらい思いをされ、受診される方がとても多くいらっしゃいます。

職場や学校、家庭の中で、

  • 気持ちを切り替えたいのに切り替えられない
  • ぐるぐる考え続けて疲れ切ってしまう
  • 不安が強くなって行動できなくなる

こうした状態が続くと、本当に苦しいですよね。

診察の中でも、

「この執着をどうやって手放したらいいですか?」
「考えないようにしても、余計に考えてしまいます」

と対処法を尋ねられることがとても多くあります。

今日はこの「執着」について、
心のしくみや疾患との関連、そして日常でできる対処法を、できるだけやさしく整理してみたいと思います。


執着は「弱さ」ではありません

執着してしまうと、

  • いつまでも気にしている自分が嫌
  • もっと強くならなきゃ
  • こんなことで悩むのはおかしいのでは

そう感じてしまう方も少なくありません。

でも、まずお伝えしたいのは――
執着は、あなたの弱さや性格の問題ではないということです。

むしろ、

  • まじめで
  • 責任感が強く
  • 人を大切にする人

ほど、心が引っかかりやすいことがあります。


執着と“心の不調”の深い関係

執着は誰にでも起こりますが、
特定の疾患や状態があると、より強く・長く続きやすくなります。


① 不安障害(不安神経症)と執着

もっとも執着と結びつきやすいのが“不安”です。

不安が強いと、

  • 失敗するのが怖い
  • 将来が心配
  • 人からの評価が気になる

という気持ちが大きくなり、

同じ考えを何度も反すうしたり、
可能性をぐるぐる考え続けたりします。

これは、

“不安から自分を守ろうとする心の反応”

でもあります。

心配が強いほど、
人は答えを出そうとして考え続け、結果として執着が強くなるのです。


②強迫性障害(OCD)と執着

強迫性障害では、

  • 不安な考えが何度も浮かぶ
  • 同じ確認を繰り返す
  • 納得できるまで考え続ける

といった形で、非常に強い執着が起こります。

この場合の執着は、

  • 意志の弱さ
  • 性格の問題

ではなく、明確に “治療の対象となる症状” です。

「やめたいのにやめられない」ことが多く、
専門的な治療やサポートがとても重要になります。


発達特性と執着の関係

ここからは、発達特性との関連を詳しく見ていきます。


■ ASD(自閉スペクトラム症)と執着

ASDのある方は、

  • 興味が一点に向きやすい
  • 気持ちの切り替えが苦手
  • 曖昧さが苦手
  • 納得できないことがあると引っかかりやすい

といった特徴を持ちやすく、

  • 同じ出来事を何度も思い返す
  • こだわりが強くなる
  • 納得するまで考え続ける

という形で執着が起こりやすくなります。

これは「しつこい性格」ではなく、
脳の情報処理の特性によるものです。

ASDの方に向けた対処のコツ

  • 気になることを紙に書き出す
  • 事実と解釈を分ける
  • 「考える時間」をあらかじめ決める
  • 切り替えの“儀式”をつくる(メモを閉じる・席を立つ等)

“頭の中だけで処理しない”ことが、とても助けになります。


■ ADHDと執着

ADHDでは、

  • 頭の中に考えが次々浮かぶ
  • 感情が強く残りやすい
  • 気になると止めにくい

といった形で執着が起こることがあります。

特に対人関係の出来事や感情的な出来事に、
強くとらわれやすい傾向があります。

ADHDの方に向けた対処のコツ

  • 刺激を減らす(通知オフなど)
  • タイマーで区切る
  • 体を動かしてクールダウン
  • “行動で切り替える”ことを意識する

考えを直接変えようとするより、
行動で流れを変えるほうがうまくいくことが多いです。


■ 境界知能と執着

境界知能の方では、

  • 情報を整理するのが苦手
  • 抽象的に考えるのが難しい
  • 状況を客観視しにくい

といった特徴から、

  • 同じ不安をぐるぐる考える
  • ひとつの出来事に強くとらわれる

という形で執着が起こりやすくなります。

境界知能の方に向けた対処のコツ

  • 考えるテーマをひとつに絞る
  • 選択肢を2つまでにする
  • 箇条書きや図で整理する
  • 支援者と一緒にまとめる

“シンプル化と具体化”が、いちばんのポイントです。


執着をゆるめるための具体的対処法

執着をとるために大切なのは、

  • 無理に考えを消そうとしない
  • うまく付き合える形をつくる
  • 少しずつ距離をとる

という発想です。

ここでは、実際に役立つ方法をできるだけ具体的にご紹介します。


1.まずは「気づく」

「あ、いま執着モードに入ってるな」

と気づくことが第一歩です。
良い・悪いと判断せず、ただラベルを貼るように眺めてみます。


2.考えと自分を切り離す

「私はダメだ」
ではなく

「“私はダメだ”という考えが浮かんでいる」

と言い方を変えてみます。

考え=事実ではなく、
考え=頭に浮かんだ出来事として扱えるだけで、心が少し軽くなります。


3.ぐるぐる思考を区切る

  • 15分だけ考える(タイマーで区切る)
  • 書き出して、いったん閉じる
  • 「今は考えないことリスト」に入れて保留にする

“無制限に考え続けない仕組み”を作ると、執着は弱まりやすくなります。


4.注意を「今ここ」に戻す

  • 4秒吸って6秒吐く呼吸
  • 五感に意識を向ける(見えるもの・聞こえる音など)
  • 立つ/歩く/軽いストレッチ

考えを追い払おうとするより、
注意の向きを変える方がうまくいきやすいです。


5.行動中心で切り替える

「考えを変えてから動く」よりも
「動くことで考えをゆるめる」

ことを大切にします。

  • 5分だけ動く
  • 目の前の小さな作業をひとつだけする

それだけでも、心の渦が少しずつほどけていくことがあります。


6.完璧主義には「行動実験」

  • あえて60点で提出してみる
  • 途中で止めてみる
  • “ほどほど”を試してみる

「完璧でなくても大丈夫だった」という体験が増えるほど、執着はゆるみやすくなります。


7.生活面の土台を整える

睡眠不足や疲労があると、執着は強まりやすくなります。

「眠る・休む・整える」ことは、
気合いではなく、立派な対処法のひとつです。


8.医療的サポートが必要な場合

  • 考えが止まらず眠れない
  • 生活に大きく支障がある
  • 強い不安や落ち込みが続く
  • 確認行動がやめられない

このような場合は、
カウンセリング/認知行動療法/お薬などの力を借りることで、楽になることが多くあります。


価値観を広げることも大切

診察の場では、執着が強い方に対して

「今、世界が“ひとつの出来事”だけで埋まってしまっていませんか?」
「人生の大事な軸を、少しだけ増やしてみましょうか」

とお伝えすることがあります。

執着が強いとき、私たちは

  • ひとつの出来事
  • ひとつの評価
  • ひとつの結果

だけが、世界のすべてのように感じてしまいます。

でも本当は、

  • 仕事だけが人生ではない
  • 評価だけが自分ではない
  • ひとつの失敗が人生の価値を決めるわけではない

という広い視点があります。

自分の中の価値観が、

仕事/人間関係/趣味/休息/健康/家族
などへと少しずつ広がっていくほど、ひとつのことへの執着は自然と小さくなっていきます。

執着をとるとは、

“考えをなくすこと”ではなく、
人生の視野を、やさしく広げていくことでもあるのです。


さいごに

執着をとるというのは、

「考えないようにする」ことではなく、
“考えに振り回されない自分をつくること” です。

そしてそれは、努力や根性ではなく、
自分に合った“やり方のコツで身につけていくものです。

当院では、

  • 不安障害による執着
  • 強迫症によるとらわれ
  • ASD・ADHD・境界知能に関連した執着

について、それぞれの特性に合わせたサポートを行っています。
つらいときは、どうぞお気軽にご相談ください。

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