お知らせ・ブログ
- 2026.02.08
- ブログ
「執着をとる」「ぐるぐる思考をとる」ということ― 発達特性・不安障害との関連と、心を軽くする具体的な対処法 ┃松山市の心療内科・古町メンタルクリニックより
当院には、
- 仕事のことで同じ不安が頭から離れない
- 人間関係の出来事を何度も思い返してしまう
- 過去の失敗にずっととらわれている
といった“執着”や“とらわれ”でつらい思いをされ、受診される方がとても多くいらっしゃいます。
職場や学校、家庭の中で、
- 気持ちを切り替えたいのに切り替えられない
- ぐるぐる考え続けて疲れ切ってしまう
- 不安が強くなって行動できなくなる
こうした状態が続くと、本当に苦しいですよね。
診察の中でも、
「この執着をどうやって手放したらいいですか?」
「考えないようにしても、余計に考えてしまいます」
と対処法を尋ねられることがとても多くあります。
今日はこの「執着」について、
心のしくみや疾患との関連、そして日常でできる対処法を、できるだけやさしく整理してみたいと思います。
執着は「弱さ」ではありません
執着してしまうと、
- いつまでも気にしている自分が嫌
- もっと強くならなきゃ
- こんなことで悩むのはおかしいのでは
そう感じてしまう方も少なくありません。
でも、まずお伝えしたいのは――
執着は、あなたの弱さや性格の問題ではないということです。
むしろ、
- まじめで
- 責任感が強く
- 人を大切にする人
ほど、心が引っかかりやすいことがあります。
執着と“心の不調”の深い関係
執着は誰にでも起こりますが、
特定の疾患や状態があると、より強く・長く続きやすくなります。
① 不安障害(不安神経症)と執着
もっとも執着と結びつきやすいのが“不安”です。
不安が強いと、
- 失敗するのが怖い
- 将来が心配
- 人からの評価が気になる
という気持ちが大きくなり、
同じ考えを何度も反すうしたり、
可能性をぐるぐる考え続けたりします。
これは、
“不安から自分を守ろうとする心の反応”
でもあります。
心配が強いほど、
人は答えを出そうとして考え続け、結果として執着が強くなるのです。
②強迫性障害(OCD)と執着
強迫性障害では、
- 不安な考えが何度も浮かぶ
- 同じ確認を繰り返す
- 納得できるまで考え続ける
といった形で、非常に強い執着が起こります。
この場合の執着は、
- 意志の弱さ
- 性格の問題
ではなく、明確に “治療の対象となる症状” です。
「やめたいのにやめられない」ことが多く、
専門的な治療やサポートがとても重要になります。
発達特性と執着の関係
ここからは、発達特性との関連を詳しく見ていきます。
■ ASD(自閉スペクトラム症)と執着
ASDのある方は、
- 興味が一点に向きやすい
- 気持ちの切り替えが苦手
- 曖昧さが苦手
- 納得できないことがあると引っかかりやすい
といった特徴を持ちやすく、
- 同じ出来事を何度も思い返す
- こだわりが強くなる
- 納得するまで考え続ける
という形で執着が起こりやすくなります。
これは「しつこい性格」ではなく、
脳の情報処理の特性によるものです。
ASDの方に向けた対処のコツ
- 気になることを紙に書き出す
- 事実と解釈を分ける
- 「考える時間」をあらかじめ決める
- 切り替えの“儀式”をつくる(メモを閉じる・席を立つ等)
“頭の中だけで処理しない”ことが、とても助けになります。
■ ADHDと執着
ADHDでは、
- 頭の中に考えが次々浮かぶ
- 感情が強く残りやすい
- 気になると止めにくい
といった形で執着が起こることがあります。
特に対人関係の出来事や感情的な出来事に、
強くとらわれやすい傾向があります。
ADHDの方に向けた対処のコツ
- 刺激を減らす(通知オフなど)
- タイマーで区切る
- 体を動かしてクールダウン
- “行動で切り替える”ことを意識する
考えを直接変えようとするより、
行動で流れを変えるほうがうまくいくことが多いです。
■ 境界知能と執着
境界知能の方では、
- 情報を整理するのが苦手
- 抽象的に考えるのが難しい
- 状況を客観視しにくい
といった特徴から、
- 同じ不安をぐるぐる考える
- ひとつの出来事に強くとらわれる
という形で執着が起こりやすくなります。
境界知能の方に向けた対処のコツ
- 考えるテーマをひとつに絞る
- 選択肢を2つまでにする
- 箇条書きや図で整理する
- 支援者と一緒にまとめる
“シンプル化と具体化”が、いちばんのポイントです。
執着をゆるめるための具体的対処法
執着をとるために大切なのは、
- 無理に考えを消そうとしない
- うまく付き合える形をつくる
- 少しずつ距離をとる
という発想です。
ここでは、実際に役立つ方法をできるだけ具体的にご紹介します。
1.まずは「気づく」
「あ、いま執着モードに入ってるな」
と気づくことが第一歩です。
良い・悪いと判断せず、ただラベルを貼るように眺めてみます。
2.考えと自分を切り離す
「私はダメだ」
ではなく
「“私はダメだ”という考えが浮かんでいる」
と言い方を変えてみます。
考え=事実ではなく、
考え=頭に浮かんだ出来事として扱えるだけで、心が少し軽くなります。
3.ぐるぐる思考を区切る
- 15分だけ考える(タイマーで区切る)
- 書き出して、いったん閉じる
- 「今は考えないことリスト」に入れて保留にする
“無制限に考え続けない仕組み”を作ると、執着は弱まりやすくなります。
4.注意を「今ここ」に戻す
- 4秒吸って6秒吐く呼吸
- 五感に意識を向ける(見えるもの・聞こえる音など)
- 立つ/歩く/軽いストレッチ
考えを追い払おうとするより、
注意の向きを変える方がうまくいきやすいです。
5.行動中心で切り替える
「考えを変えてから動く」よりも
「動くことで考えをゆるめる」
ことを大切にします。
- 5分だけ動く
- 目の前の小さな作業をひとつだけする
それだけでも、心の渦が少しずつほどけていくことがあります。
6.完璧主義には「行動実験」
- あえて60点で提出してみる
- 途中で止めてみる
- “ほどほど”を試してみる
「完璧でなくても大丈夫だった」という体験が増えるほど、執着はゆるみやすくなります。
7.生活面の土台を整える
睡眠不足や疲労があると、執着は強まりやすくなります。
「眠る・休む・整える」ことは、
気合いではなく、立派な対処法のひとつです。
8.医療的サポートが必要な場合
- 考えが止まらず眠れない
- 生活に大きく支障がある
- 強い不安や落ち込みが続く
- 確認行動がやめられない
このような場合は、
カウンセリング/認知行動療法/お薬などの力を借りることで、楽になることが多くあります。
価値観を広げることも大切
診察の場では、執着が強い方に対して
「今、世界が“ひとつの出来事”だけで埋まってしまっていませんか?」
「人生の大事な軸を、少しだけ増やしてみましょうか」
とお伝えすることがあります。
執着が強いとき、私たちは
- ひとつの出来事
- ひとつの評価
- ひとつの結果
だけが、世界のすべてのように感じてしまいます。
でも本当は、
- 仕事だけが人生ではない
- 評価だけが自分ではない
- ひとつの失敗が人生の価値を決めるわけではない
という広い視点があります。
自分の中の価値観が、
仕事/人間関係/趣味/休息/健康/家族
などへと少しずつ広がっていくほど、ひとつのことへの執着は自然と小さくなっていきます。
執着をとるとは、
“考えをなくすこと”ではなく、
人生の視野を、やさしく広げていくことでもあるのです。
さいごに
執着をとるというのは、
「考えないようにする」ことではなく、
“考えに振り回されない自分をつくること” です。
そしてそれは、努力や根性ではなく、
自分に合った“やり方のコツで身につけていくものです。
当院では、
- 不安障害による執着
- 強迫症によるとらわれ
- ASD・ADHD・境界知能に関連した執着
について、それぞれの特性に合わせたサポートを行っています。
つらいときは、どうぞお気軽にご相談ください。


