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- 2025.05.10
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「いろんなことを同時にできない…」そんな自分にやさしくなれる方法──マルチタスクが苦手なあなたへ ┃松山市の心療内科・古町メンタルクリニックより
■ はじめに
「ひとつのことに集中していたら、ほかのことを忘れてしまった」
「次々に頼まれると、頭が真っ白になる」
「途中で中断されると、もう元に戻れない…」
そんなふうに感じて、自分を責めてしまったことはありませんか?
でも、それはあなたのせいではありません。
それは「脳の特性」によるものかもしれません。
特にADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)など、発達特性を持つ方には、「マルチタスクが苦手」という傾向がよく見られます。
今回は、
- なぜマルチタスクが苦手なのか
- 毎日を少しラクにする工夫
- 中断からの「再開」がうまくいくコツ
を、やさしく、くわしくお伝えします。
■ マルチタスクって、本当に必要?
よく「マルチタスクができる人=優秀」と思われがちですが、
実は人間の脳は、本来マルチタスクが得意ではありません。
複数のことを同時にしているように見えても、脳は「Aをして→Bに切り替えて→またAへ戻る」など、作業をすばやく切り替えているだけ。
この切り替えは脳に大きな負担がかかり、集中力や記憶力が削られてしまうのです。
発達特性のある方は、
- 注意の切り替えが苦手
- ワーキングメモリが弱い(情報を一時的に保持する力)
- 順番や段取りをつけるのがむずかしい
といった傾向があり、マルチタスクは特につらく感じやすいのです。
■ こんな場面で困りごとが起きやすい
- 料理をしていたのに、洗濯機が鳴って、電話も来て…何をしていたか分からなくなる
- 上司から「あれもこれも」と一度に指示されて混乱
- 会議中、話を聞きながらメモを取るのがしんどい
- 作業中に話しかけられたら、もう元に戻れない
でも、これは「努力不足」ではありません。
脳の使い方の“クセ”に合ったやり方が必要なだけなんです。
■ 自分を助けるための工夫(マルチタスクが苦手な人の対処法)
◎ 1. 「同時にやらない」と決める(シングルタスクでOK)
同時に複数のことをこなそうとせず、一つひとつ順番にやると決めてしまいましょう。
具体的な工夫:
- 朝いちばんに「今日やることの中で最優先」を1つ決める
- 頼まれごとは「順番にやりますね」と伝える
- 「まずこれ→次にこれ」と自分の中で順序をつくる
◎ 2. 覚えず、書く(メモ・ToDoリストを活用)
頭の中にたくさんのことを抱えていると、どんどん忘れて混乱します。
「覚えずに、外に出す」ことが大事です。
具体的な工夫:
- 作業中に「今やっていること」を紙やスマホにメモしておく
- やることリストは「動詞+目的」で書く(例:「Aさんにメール送信」「書類にハンコ押す」)
- 1日の中で「朝・昼・夕」の3分割ToDoリストをつくると負担が少ない
◎ 3. タイマーで集中を区切る(時間管理を味方に)
集中が続かない、始められないときは、「時間を決めてやる」のが効果的です。
具体的な工夫:
- 15分だけ集中して、5分休憩(ポモドーロ法)
- 「この仕事には20分だけ使う」と決めて取りかかる
- スマホのアラームで「今は他のことをしない時間」と区切る
◎ 4. 「再開メモ」で戻れる仕組みをつくる
途中で中断されても、**「何をしていたか」「どこまで進んでいたか」**が書かれていれば、戻りやすくなります。
具体的な工夫:
- 中断前に「次にやること」を1行メモ(例:「グラフを挿入するだけ」「あと3行で完成」)
- 作業のスタート時に「この仕事のゴール」をメモしておくと再確認しやすい
- メモを目の前(モニターの下・手帳・付箋)に貼ると効果的
◎ 5. 思い出せなくても自分を責めない
中断から戻れないことは、誰にでもあります。特に発達特性がある方にはよくあることです。
再開できないときは:
- メモを見返す
- 別の軽い作業から手をつけてみる(ウォーミングアップ効果)
- 「仕切り直し」してOKと自分に言ってあげる
◎ 6. 人に伝えて助けてもらう(コミュニケーションも工夫)
周囲の人が「同時に頼むと混乱する」ことを知ってくれれば、やりやすくなります。
伝え方の例:
- 「一度にたくさん言われると、頭が混乱してしまうので、順番にお願いできますか?」
- 「まずこちらを終えてから、次のことに取りかかります」
- 「いまこの作業中です。終わったら声をかけますね」
◎ 7. 環境をととのえる(集中を助ける空間づくり)
見えるもの・聞こえる音が多いと、注意がそれやすくなります。
具体的な工夫:
- 机の上は「今使うもの」だけにする
- 通知をオフ、スマホは別の部屋へ
- イヤーマフや耳栓で音を減らす
- 静かな場所や、集中しやすい「お気に入りの場所」を見つける
■ おわりに
マルチタスクが苦手なことは、「欠点」ではありません。
むしろ、一つずつ丁寧に取り組める力があるということです。
自分に合ったやり方を見つけて、毎日を少しずつ過ごしやすくしていきましょう。
無理に人に合わせなくても大丈夫。
「私は私のやり方でやっていく」──そのスタイルでいいんです。
一歩ずつ、丁寧に。
あなたのペースで、あなたらしく進んでいけますように。