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- 2025.04.29
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なぜ「話を聞いても理解できない」と感じるのか?〜背景にある理由と対策〜 |松山市の心療内科・古町メンタルクリニックより
はじめに
「話を聞いているのに、内容が頭に入らない」「すぐに忘れてしまう」──
そんな悩みを抱えている方は、決して珍しいことではありません。
今回のテーマは、実際に患者さんからご相談いただいた内容をきっかけに取り上げました。
また、「よくある悩みだとわかっていても、相談していいのか迷っていた」という声も多く耳にします。
一生懸命に理解しようとしているのに、うまくいかない。
それは、努力が足りないからでも、怠けているからでもありません。
脳の情報処理の特徴や発達特性が関係している場合があるのです。
このブログでは、「話を理解できない理由」と、「少しでも負担を減らすための工夫」について、
同じような悩みを持つ方に少しでも安心していただけるように、まとめています。
話を理解しにくくなる背景
発達特性が関係している場合
1. ADHD(注意欠如・多動症)の場合
- 注意の持続が難しい
最初は集中していても、話の途中で注意がそれてしまうことがあります。特に話が長くなると、集中が続きにくくなります。 - ワーキングメモリ(作業記憶)の弱さ
聞いた情報を一時的に頭にとどめ、整理していく力が弱いと、話の内容を保持できず、「結局、何を言われたのかわからない」と感じることが増えてしまいます。
2. ASD(自閉スペクトラム症)の場合
- 聴覚過敏や雑音への過敏性
周囲の雑音や環境の変化に敏感で、必要な音だけに集中することが難しくなります。 - 選択的注意の困難
「この声だけに集中する」という切り替えがうまくいかず、ほかの物音に気を取られてしまうことがあります。 - 言葉の裏の意味を読み取りにくい
比喩やあいまいな表現が理解しづらく、「聞こえてはいるけれど意味がわからない」状態になりやすいことがあります。
耳鼻科で診断される場合もある:聴覚情報処理障害(APD)
聞こえ自体に問題がないにもかかわらず、音や言葉の意味を脳でうまく処理できない状態を「聴覚情報処理障害(APD)」といいます。
耳鼻科を受診してAPDと診断されるケースもあり、特にADHDやASDの発達特性と重なっていることが指摘されています。
誰よりも「わかりたい」と思っているあなたへ
一生懸命に聞こうとしても、うまく理解できない。
その苦しみは、周囲にはなかなか伝わらないかもしれません。
でも、それはあなたが「努力していない」からではありません。
脳の特性によって、話を理解するために、他の人よりも多くのエネルギーを必要としているだけなのです。
どうか、必要以上に自分を責めないでください。
話を理解しやすくするための具体的な工夫
1. 環境を整える
- できるだけ静かな場所で話を聞く
雑音を減らすことで集中しやすくなります。静かな部屋や落ち着いた場所を選びましょう。 - 話し手の顔が見える位置に座る
口元や表情を見ることで、言葉以外の情報も受け取りやすくなります。
2. メモをとる
- 聞きながらキーワードだけをメモ
すべてを記録しようとせず、重要な単語やポイントだけを短くメモします。 - あとで清書して整理
メモを見直して清書することで、記憶が整理され、理解が深まります。
3. 要点を確認する
- 自分の言葉でまとめて確認する
「つまり、○○ということですね」と自分の言葉で要点を確認することで、理解が確実になります。 - 話を区切ってもらう
長い話を一度に聞くのではなく、途中で小分けにしてもらうと負担が減ります。
4. 疲れているときは無理をしない
- エネルギー切れに気づく
疲れたと感じたら無理せず、「少し休憩を入れさせてください」と伝えましょう。 - 情報を分割して受け取る
一度にすべてを聞こうとせず、「まずここまで」と区切ることで理解しやすくなります。
5. わからないときは、聞き返してもいい
聞き返すのは、簡単なことではありません
話がうまく理解できないと、「またわからなかったらどうしよう」「迷惑をかけるかも」と不安になり、
聞き返すこと自体がとても怖くなることがあります。
そんなときは、まず**「聞き返すのが怖いのは自然なこと」**だと受け止めてください。
あなたは努力していないわけでも、怠けているわけでもありません。
それでも「わかりたい」という思いがあること自体が、すでにとても尊いことなのです。
聞き返すときの心構え
- 「聞き返す=失敗」ではない
正しく理解しようとする行動は、むしろ信頼につながります。 - 自分を責めない
理解に時間がかかることは、決して悪いことではありません。 - コミュニケーションは「お互いさま」
聞き返すことで、相手もわかりやすく説明し直すチャンスを得られます。
怖いときに使いやすい言葉がけ
- 「すみません、もう一度だけお願いできますか?」
- 「少し難しかったので、もう少しだけゆっくり教えてもらえると助かります」
無理にがんばりすぎず、できる範囲で大丈夫です。
最後に
「話が理解できない」と感じることは、あなたの努力が足りないからではありません。
それは、あなたが「わかりたい」と真剣に思っているからこそ生まれる悩みです。
無理せず、できる範囲で、少しずつ。
そして、必要なときには、ぜひ専門家の支援も活用してください。
当院では、発達特性や情報処理の特徴をふまえたサポートを行っています。
どうか一人で悩まず、気軽にご相談ください。
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